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【科学史の本としても】 夏井睦『傷はぜったい消毒するな』 

傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)傷はぜったい消毒するな
(2009/06/17)
夏井睦 (光文社新書)



副題は,「生態系としての皮膚の科学」。

傷ができたときに,
「消毒して,乾かす」が世間の常識。

しかし,著者の主張では,
傷は消毒せず,乾燥させない方が,傷は早く治ると言う。
これは,医学の常識に,まっこうから反する。

著者は,外科から形成外科にうつった,形成外科医である。
形成外科の世界では,傷は消毒・乾燥させないのは,
常識であるそうだ。

それが,外科の常識とはあまりに違うことに驚いて,
著者は,「傷の治り方」を研究し「湿潤療法」を開発する。

しかし,この「湿潤療法」は,
なかなか,治療法として受け容れられない。

なぜなのだ,と悩んで,この人は,歴史を掘る。

んで,科学史やパラダイム論に行き当たり,
この本の後半は,なんとパラダイム論の本になるのだ。

新書で,これくらい内容が「展開」する本は,
なかなか見たことない。

楽知んを古くから知る人なら,
知っている人は知っている,
「ゼンメルワイス」の話も出てくる。

    *

おもしろいと思ったのは,
この「発見」ができたのは,
 自分が途中で,外科から,形成外科にうつったから
と著者が書いている点。

はじめから形成外科に入門すると,
形成外科では傷を消毒しないのは「常識」なので,
疑問を持つ人はいないそうだ。
「外科の非常識は,形成外科の常識」
「形成外科の常識は,外科の非常識」
なわけである。

もう1つは,

 「インターネットとの幸福な出会い」

という章があって,

著者の提唱した「湿潤療法」は,
同僚や周囲の医師からは,支持されなかった。
しかし,自分のホームページ
(医学と関係ない,クラシック音楽についてのページ)で
湿潤療法のことを日記で書いたところ,
ホームページの読者から口コミで広がって話題になり,
追試をしてくれる人もあらわれる。

革新的なアイデアが最初に受け入れられたのは,
既存の権威ではなくて,
インターネットを通じて「大衆」からだったのだ。

このへんのことも,おもしろい。
自分の経験が先にあって,その体験を解明するために,
パラダイム論のことが紹介されているので,迫力がある。

いい本だ。『たのしい授業』を読んでいる人で,
科学史のことにも興味がある人なら,おもしろく読めると思う。

コメント

これは面白そうですね。今度買ってみます。
オペをするときはイソジンで消毒するんですが,イソジンの消毒は強力過ぎて切開した部分がくっつくのが遅れると聞いたことがあります。だから外科の先生も使いたくはないけど感染症が怖いから使わざるを得ない,というのが現状だとか。

ソブ #- | URL | 2010/01/24 23:10 * edit *

>ソブさん
はい,著者も,なんでもかんでも覆えばいいんじゃなくて,
深すぎる裂傷などは,きちんと外科にかかることをススメています。
リスクや衛生状態などの条件による,ということでしょう。
(このへんも,きちんと限界を明らかにしているので,
 アヤしいだけの民間療法とは一線を画していると思えます)

ガンジー #gJtHMeAM | URL | 2010/01/25 23:24 * edit *

最近は

むやみに消毒しないって方向みたいですね。
指を縫ったときに知りました。
水道水に含まれる塩素だけで充分だとか。
こんな身近なところも進歩していく余地があるというのもおもしろいですね。

こいけ #OxdC9shk | URL | 2010/01/29 13:19 * edit *

>こいけさん
どもども。返信遅くなりました。
おひさしぶりです。

むしろ,身近なところにこそ,
きちんと研究されていない,盲点のようなテーマは,
た~くさん転がっているように思います。

問題は,それを問題として意識できるか,
ということと,
うまく取り扱う,切り口を見つけられるか,ということなのでしょう。

センモンカになってしまうと,
こういうところは,かえって見つけにくくなりますね。
(自戒もこめつつ……)

ガンジー #gJtHMeAM | URL | 2010/01/31 23:21 * edit *

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